モーツァルトに会いたい・2    京都芸術センター

 《ピアノトリオ》    2007年6月10日(日) 午後2時
   ・K.548 ハ長調             ・K.542 ホ長調  
   ・(断章)アレグロ K.442 ニ短調   ・K.502 変ロ長調
                            
   ヴァイオリン/岸邉百百雄   チェロ/河野 文昭   ピアノ/河野美砂子

                                          河野 美砂子
〈ピアノトリオ〉は、モーツァルトの「室内楽」の中でも比較的地味な分野ですが、いずれも驚くほど良くできた音楽で、今回ぜひ皆様にご紹介したいと、3曲+断章1曲を選びました。
私がこれらの曲を初めて演奏会で弾いたのは、今から20年ほど前になりますが、実際に音を出してみて、あまりに上等な音楽に本当に感激したものです。
後で知ったことですが、「ピアノトリオ K.542 ホ長調」と、「K.548 ハ長調」の2曲は、いわゆるモーツァルトの3大交響曲(39番変ホ長調、40番ト短調、41番ジュピター)の谷間に書かれた曲なのです。
完成の日付は、「トリオ ホ長調」が1788年6月22日、「交響曲 変ホ長調」が6月26日、「トリオ ハ長調」が7月14日、「交響曲 ト短調」が7月25日、「ジュピター交響曲」が8月10日。
断章の「K.442」は、演奏される機会がほとんどない曲です。モーツァルトの「ニ短調」(オペラ「ドン・ジョヴァンニ」や「ピアノ協奏曲K.466」を思い出します。)がどんな響きなのか、とても楽しみにしています。
共演者のヴァイオリニスト岸邉百百雄氏は、1975年「福岡モーツァルトアンサンブル」(弦楽四重奏団)を結成。20年間にモーツァルトの弦楽四重奏曲を二度にわたって全曲演奏され、チェリスト河野文昭も、そのうち約8年間演奏を共にしました。
今回の久しぶりの共演は、クヮルテット時代の演奏を思い出すとともに、二人の楽器がいずれもリュポー(1758年〜1824年・フランス)晩年の作であることも、また興味深く思っているところです。


  《4手のピアノ曲》     7月6日(金) 午後7時
    ・ソナタ K.381 ニ長調        Primo 河野美砂子 Secondo 小林道夫
    ・変奏曲 K.501 ト長調  
       Primo 小林道夫 Secondo 河野美砂子
    ・フーガ K.401 ト短調 および ・アレグロ K.357 ト長調
                         
Primo 河野美砂子 Secondo 小林道夫
     ・自動オルガンのための幻想曲 K.608 へ短調 
                   
          Primo 小林道夫 Secondo 河野美砂子      
    ・ソナタ K.497 ヘ長調  
        Primo 河野美砂子 Secondo 小林道夫  

有名な肖像画「モーツァルトの家族」(クローチェ画・1780〜81年)では、モーツァルトと姉のナンネルが、二人並んでクラヴィア(当時のピアノ)を演奏しているところが描かれています。
左側に座ってるモーツァルトの右手が、右側のナンネルの左手をまたいでいるところが印象的ですが、モーツァルトは、幼い頃からことあるごとにナンネルとの連弾を楽しんでいました。
今回、「ピアノだけによる室内楽」とも言える4手の作品を集中的に勉強してみて、あらためてその豊かさに驚いているところです。
1曲1曲ここに書く余裕がありませんが、たとえば、「自動オルガンのための幻想曲」をベートーヴェンが写譜していた、というエピソードだけでも、その価値の一端がご理解いただけるでしょう。
「ソナタ K.497」に関しても、私個人としては、ピアノソロソナタのどの曲よりも、これはさらに充実したものだと感じています。
現代のモーツァルト(?)とも言われる、R.レヴィン氏補作の「アレグロ K.357」も2005年に出版されたばかりで、期待するところ大です。
小林道夫氏は、言わずと知れた、日本のバッハ・モーツァルト演奏の第一人者。若かりし小林氏と岸邉百百雄氏は、モーツァルトの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」をご一緒に数多く演奏されたそうです。
私自身は、約20年前、小林氏とブラームスの連弾曲をご一緒して以来の共演になります。
その時は私がプリモ(右側に座る=高音担当)でしたが、今回は曲によって交代するところも密かな楽しみの一つです。
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